初めての......
5月22日〜23日にインドネシアで開催をされた、インダストリーオールICT電機・電子部門運営委員会に出席した。
この委員会には世界14ヵ国より総勢50名の方々が集まった。今回の議題は、昨年確認をしたアクションプランに対する取り組み状況の共有と今後の行動計画の確認だ。6つあるセクションそれぞれで、まず各国からの報告聞き、全体で討議をするという進め方で、熱のこもった議論が続き、2日間では時間不足を感じるものとなった。昨年、部会長を前委員長の有野さんから引継ぎ、初めての議長を務めたが精神的に疲れたというのが正直な感想である。
論議テーマ
主な論点は、「組織化と組合の力の構築」「不安定雇用とサプライチェーン戦略」「未来の製造と持続可能な産業政策」「多国籍企業と労働組合ネットワーク構築」そして「アクションプランの今後の取り組み計画」であった。
国によって文化や事情に違いがあるにも関わらず、討議が進んでいくのが、不思議でもあり、大切にしたい価値観の1つだと思った。
とりわけ、インダストリー4.0に関する討議は印象深かった。報告を行ったデンマークやイギリス、シンガポールなどは、変化を前向きに受け止め、むしろ主体性を持って人材育成などの就業構造の変化への対応を進めていかねばならないとの姿勢を示した。それに対して、マレーシアからは「人員削減に繋がることには反対をするのが、労働組合ではないだろうか?」との意見が出された。おそらく新興国の皆さんは同様の思いを持っていたのではないだろうか。 この討議の結論は、好むと好まざるとに関わらず押し寄せてくる変化を受け身で待つのではなく、むしろ主体性を持って対応していかねばならないのではないだろうか? それぞれの国による違いはお互いに認め合いながらも、情報共有などの連携をして行こうということとなった。
パーティ
最終日の夜に、全体パーティが企画されていた。ステージが設営されバンドが準備されていた。各国の参加者は、8テーブル程の席に混じり合って座った。言葉が違う中では、それぞれにコミュニケーションも上手く取れずに、食事が終われば三三五五に帰っていくのがこの種のパーティでの通例と聞いていた。ところが、今回は違っていた。ホスト国であるインドネシアの組織FSPMIのイクバル会長の歓迎の挨拶でスタートしてからずっと、バンドの歌と踊りで盛り上がり、最終的には各国対抗歌合戦となった。言葉は通じなくてもお互いに仲間であることを共感できたひとときであった。
国際労働運動への思い
国際会議に出て必ず出る課題は、不安定労働の問題である。グローバル企業では、私達が普通に使っている「グローバル競争に勝つ」という目標に間違はないだろう。しかしこうやって各国の方々と情報交換をすると、世界の国々では、不安定雇用や低処遇、劣悪な労働環境などが大きな問題となっていることに気づく。これらがコスト競争に勝つために行われているとすれば他人事で済ますことは出来ない。「競争に勝つ」という価値観から「共存共栄」の価値観への転換が必要である。
またICT電機電子産業は、世界の人々を豊かにし、世界の文化発展に貢献する使命を持った産業である。従って、この産業を牽引する企業は、世界の人々からリスペクトされる企業でなければならないと思う。その最も大きな視点は、「人を大事にする経営」を実行しているかどうかではないだろうか。何故なら、製品もサービスも「人が創り出すもの」だからである。しかし世界の実態を見る限り、そうなってはいない。企業の競争力は「人が創る時代」である。ディーセントワークの実現、人間大事の経営という価値観を創り出していくことも、労働運動として大事な視点だと感じた。
信頼と友情の部会......
委員会の最後に出席者の皆さんに問いかけてみた。「ICT電機・電子部会の特徴は何か?と問われたら、皆さんはどう答えるか?」私は「それは、友情だ。信頼をベースにした揺るぎない友情だと答えたいが、どうだろう?」と問いかけてみた。これには、全員の賛同を得ることが出来たと思っている。今後の部会運営における「相互理解と連帯」の必要性を改めて共有して2日間の会議を無事に終えた。

中央執行委員長 野中 孝泰
過去のコラム一覧
- インダストリオールICT電機・電子世界会議に参加して (2019年10月28日)
- 192,587票の重み (2019年7月30日)
- ドイツ訪問で感じたこと「インダストリー4.0 労働の未来」 (2019年6月 5日)
- ドイツ訪問で感じたこと ―労働組合について― (2019年5月14日)
- 2019年総合労働条件改善闘争 (2019年2月22日)
- 新年のスタートにあたり(2019年) (2019年1月 8日)
- 一生懸命 (2018年12月26日)
- 英国のEU離脱問題に思うこと (2018年10月 3日)
- 定期大会で感じたことは (2018年8月 3日)
- 2018年 インダストリオール ICT電機・電子部門運営委員会 in インド (2018年5月31日)
- 統一闘争のメッセージ (2018年3月30日)
- 新年のスタートにあたり(2018年) (2018年1月 5日)
- 2017年の感謝を込めて (2017年12月20日)
- 緊張感ある政治体制をめざして (2017年11月28日)
- 総選挙を意義あるものに (2017年9月28日)
- 待った、取り直し。 (2017年8月 2日)
- インダストリオールICT電機・電子部門運営委員会に出席して (2017年5月31日)
- 「働き方改革に向けた労使共同宣言」に込めた思い (2017年3月30日)
- 新年のスタートにあたり(2017年) (2017年1月 5日)
- 今年一年の感謝を込めて (2016年12月22日)