電機連合

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電機連合とは

電機連合の基本理念や運動方針など、電機連合のWhat's!にお答えします。

時季(とき)に応じて

【最終回】退任にあたり〜私と労働運動〜

はじめに

 時が経つのは本当に早いもので、退任から3週間が経とうとしている。第68回定期大会はコロナウイルス感染予防のため、オンラインによる開催とした。すべてが初めてのことであり、不安も多くあったが無事に終了することができたのは、関係各位のご協力のおかげであり、心から感謝を申し上げたい。今年は役員改選年であり、委員長交代の大会でもあった。電機連合本部の役員に選出されたのが10年前、副委員長4年、書記長2年、委員長4年の長きにわたり歴史と伝統ある電機連合において、労働運動に携わることができたこと、大変ありがたく思っている。これまで支えていただいたすべての方々に心からの感謝とお礼を申し上げたい。

 『時季に応じて』の最終回は、これまでの体験の中から築いてきた私なりの労働運動家像や労働組合像を『私と労働運動』という視点で述べさせていただきたい。

決して忘れることができない体験 〜葛藤、決断、挑戦〜

 松下電器労組電池連合支部の委員長だった頃、経営が超優良だった事業部が、リチウム2次電池のモノ作りの難しさ、商売の厳しさから赤字に転落、痛みを伴う事業構造改革に取り組まねばならない事態となった。事業の選択と集中、拠点閉鎖や、雇用構造改革、労働条件の見直し等を含む大改革となった。各拠点の委員長と合宿をして、労働組合としての対応方針を論議決定、「電池は一つ」の考え方で取り組もうと心合わせをした。しかし心合わせをしたとはいうものの、歴史と伝統ある拠点を閉鎖するという決断は簡単ではない。いよいよ申し入れ協議に臨む1時間前に心配でもう一度、閉鎖となる当該拠点の委員長に電話をかけた。電話の向こうから聞こえた声、それは「心配しなくて良い。みんなで決めた。申し入れを受けてくれ」だった。この言葉に涙が止まらなかった。すべての職場組合員と直接対話を重ね、改革(案)に対する理解と賛同をいただいた。労使の強い信頼の元、徹底して取り組んだことを今でもはっきりと覚えている。会社の現状、事業の強みと弱み、他社の動向、そして我々が向かうべき方向を3~4時間かけてすべての職場の組合員と徹底的に話し合った。痛みを伴う改革だっただけに、従業員一人ひとりがきちんと理解して、主体性を持って取り組まなければ、V字回復などあり得ないと思ったからだ。

 この改革を通じて、5つのことを学んだ。1つ目は、常に緊張感を持つ、良い意味での危機感を常に持っておくことの大事さである。2つ目は、労使関係の大切さである。それも信頼をベースにした、何があっても揺るがない確固たる労使関係である。3つ目は、「困難を発展の基礎」にしなければならないということ。この点は、後ほど触れさせていただく。4つ目は、仲間がいることは心強いということだ。あたりまえ過ぎることだが、重責に押しつぶされそうになった時に相談できる仲間たちが多くいたことでどれほど救われたことか。そして5つ目は、組合は組合員によって成りたっているということだ。委員長は孤独と思っていたが、この改革を乗り切る最大の支援者が実は組合員だった。そして、この体験を通じた学びと覚悟が、労働組合の役員を最後まで続けることに繋がった。

労働組合の役割と責任 〜使命〜

 上記の改革を進める上で、怯むことなく取り組むことができた理由として3つのことが挙げられる。1つ目は「働くものの代表」としての自覚である。これは組合員との徹底した対話の中から生まれた信頼でもあった。2つ目は、「労使の対等性」だ。それは、権利としての対等性ではなく、責任の重さゆえの対等性ということである。3つ目は、「困難は発展の基礎」という先ほど紹介した言葉だ。この言葉は、故・松下幸之助氏がかつて経営の危機を克服する際に発信されていたものである。その意味は、困難に直面すると一つの決意・覚悟が生まれる。そして本来の使命に立ち返り、なすべきことを断固としてなすならば、そこに知恵や才覚が生まれてくる。だからかつてない困難は、かつてないほどの発展を生み出すというものである。このことは、当時の心に強く響き、労働組合にもあてはまることとして受け止めたし、勇気づけられた。

 戦後の労働運動の歴史は、時代の変化とともに質的に転換をしてきた歴史でもある。戦後の「抵抗の時代」から高度成長期に入り、欧米に追いつけ追い越せの気運の中で「要求の時代」を迎えた。そして成熟社会を迎えた今日、労働運動には「参加・参画」が求められる時代となったと考えている。この「参加・参画」ということを念頭において、労働組合の役割と責任として大事にしてきた3つのことを紹介させていただきたい。

 1つ目は、経営参加である。誤解を恐れずに申し上げるならば、会社の成長・発展なくして雇用の維持・拡大、労働条件の維持・向上はあり得ないと言える。そういった意味では、会社が健全に経営されていることが極めて重要であり、企業内組合として経営対策の重要性は従来以上に増している。経営のグループ連結やグローバル化への対応や、日本の電機産業としての対応、あるいは産業の垣根を超えた取り組みの重要性がますます高まるだろうという認識で取り組んできた。

 2つ目は、社会参加である。世界に先駆けて進行する人口減少、超少子高齢化、そして生産年齢人口が毎年減少している日本の最大課題は「持続可能な社会の再構築」と言っても過言ではない。とりわけ、社会保障制度の再構築は先送りできない課題だ。また、1000兆円を超える国の借金問題、雇用労働者の4割を占める非正規雇用問題、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応、人生100年時代への対応、エネルギー政策や環境問題など多くの社会課題に対して、将来を見据え、現実的視点に立って進むべき方向性を見出さなければならない時代だ。そこに新型コロナウィルスが全世界を襲っている。アフターコロナの社会、価値観は大きく変わるだろう。持続可能な社会の再構築に向けた、労働組合の社会的責任は、極めて大きいということに変わりはない。労働組合は、すべての働くものの代表であり、日本社会の最も大きな構成員という自覚のもと社会課題の解決に取り組んできた。

 そして3つ目は、人を中心に据えた労働運動である。日本という国は、一人ひとりの懸命な働きによって成り立っている。世の中がいかに変わろうとも、成長の原動力は「人財」である。今の日本や企業には、湧き出るような活力、創造性や挑戦心が必要だと思う。仕事に誇りを持ち、将来に夢や希望を持ち、いきいきと働ける環境をつくることこそ大事ではないか。「人を大切にする」日本的経営の良さを再確認する必要がある。「人を大切にする」とは、その人の無限の可能性を引き出すことである。人生100年時代を迎え、まさに日本社会全体として「人を大切にする」ことを考えなければならない。そういった意味で「人を活かし、人が活きる」社会、企業、職場にしたいとの強い思いで取り組んできた。

信頼され頼りにされる労働組合 〜人間味あふれる人たちの集まり〜

 労働組合の役員は、人間味あふれる人たちの集まりでありたいと思っている。魅力ある労働運動は人間味あふれる人から生まれてくると信じているからだ。しかし、自分自身のことを素直に振り返ると、言うは安く、行うは難しとの反省となる。反省は多いにあるのだが、常日頃より心がけていたことがあるので、紹介だけさせていただこうと思う。

 まずは、組合役員としての心構えである。「公正無私」私心は必ず出るものだ。私心が出たら、それを引っ込める公の心を持つ。「素直な心」常に自然体で物事に接するということ。ある意味聞き上手になるということ。「学ぶ心」お会いするすべての人を師と思い、学ぼうとする姿勢を大事にすること。教わるのはただなのだから。「逆境に怯まない」常にネアカで行こう。そして、先ほども触れたが「労使対等」。労使対等だからといって、決して威張ることにあらず。常に謙虚で、責任の重さゆえの対等性を心がけてきた。

 次に組合役員として行動を起こす力とその考え方である。「問題を感じる力を持つ」職場で起きているちょっとした問題や疑問を見過ごさないで、常に「なぜ?」という疑問を持つ。「当事者として行動するエネルギーを持つ」言うだけは一人前だけど、自らは何もしない(できない)のはカッコ悪い。実行を伴う有言でなければならない。「制約条件を覆すパワーを持つ」いざ行動を起こそうとすると、色々なことがあって挫折するもの。そこを乗り越えるための、壁を入り口に変える柔軟な発想とパワーを身につける。「周りと共感する能力を持つ」自己中心的な考え方や行動はダメ。多くの仲間と力を合わせて、助け合うことが無限の力を生み出す。

 最後に家族や仲間について。「家族を大切に」思い切って仕事ができるのも、家族の支えがあればこそだ。「仲間を多く持つ」一度会ったら、2回目は友達。気兼ねなく付き合える仲間は一生の財産。相談できる仲間を多く持つ。 

むすび

 1991年7月に支部の執行委員になってから約30年間、労働組合の第一線で運動を進めてきた。悩みながらも、思いっきりやってこられたのは、支えていただいたすべての皆さんのおかげであり、心から感謝を申し上げたい。今後は、電機連合福祉共済センター理事長を拝命した。共済は電機連合運動の大きな特徴であり、組合員とそのご家族の生活や将来に対する不安の払拭に向けた取り組みだ。信頼され頼りにされる福祉共済センターを目指して取り組みたい。

 そして、今大会で神保さんに中央執行委員長のバトンを引き継ぐことができた。難しい時代の労働運動だからこそ、使命感を持って新しい時代を切り拓いて行って欲しいと願っている。皆さま方の神保新体制に対しますご支援を心よりお願い申し上げ、ペンを置くこととしよう。

これまでのご愛読、大変ありがとうございました。

前中央執行委員長 野中 孝泰

中央執行委員長 野中 孝泰

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