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おたすけマニュアル

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(3)残業代未払い

1.まずは、労働基準法の労働時間・休憩・休日に関する原則を理解すことが必要です。
2.残業代の計算式を正確に理解する必要があります。
3.管理職だからといって単純に残業代請求権がないと考えるのは誤りです。
4.みなし時間制の対象業務でないのにみなし時間を適用したり、年俸制を口実に実労働時間に基づく残業代支払いを拒むことは許されません。
5.残業代算定の裏付け資料を収集確保することが必要です。

【1】労働時間に関する法の大原則と例外

労働基準法は、労働時間の上限と例外、休日の原則と例外、休憩・年次有給休暇などを定めさています。

1.労働時間に関する法の大原則

a.労働時間は原則として1日8時間、週40時間を超えてはなりません(労働基準法第32条)。
b.休日の原則は週1回以上与えなければなりません(35条)。
c.労働時間は、原則として、実労働時間で算定します。
個々の労働者の労働時間は、個々の労働契約(就業規則、労働協約による場合を含む)で定められていますが、労働基準法は最低労働条件を定めていますから(1条2項)、その基準を下回る労働契約は無効とされ(労働者の同意があっても無効)、無効とされた部分は労働基準法の基準が適用される(13条)。

2.例外

a.法定労働時間の例外(残業と変形制) 法定労働時間(1日8時間、週40時間)に対する例外は残業と変形制です。残業は、法定労働時間を超えて労働させるものです(36条)。変形時間制は、一定の要件のもとに、法定を超える労働を所定労働として労働させる制度です。現行労働基準法では、1ヶ月単位(32条の2)、1年単位(32条の4)、1週間単位(32条の5)、フレックスタイム制(32条の3)の4種があり、それぞれ厳格な要件が定められています。

b.休日の例外(休日労働)
法定休日に労働させることもできます(36条)。これを休日労働といいます。

c.実労働時間による算定の例外(みなし時間制)
実労働時間の如何に拘わらず、予め定められた時間を労働したものとみなすことが認められる「みなし労働時間」があり、現行労働基準法では、事業場外労働(38条の2)、専門職裁量労働(38条の3)、企画職裁量労働(38条の4)の3種類が定められています。

d.法定時間の特例
週法定時間の特例として、10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業および接客娯楽業は、週44時間(2001年4月1日から)が法定時間とされています。1日は8時間です(40条)。

e.適用除外
労働基準法では、「管理監督職」など、法定労働時間や法定休日の規定がそもそも適用されない適用除外者が定められています(41条)。ただし、除外者であっても、深夜割増賃金(37条)と年休(39条)は適用されるので注意が必要です。

【2】労働時間に関する法を理解するために

1.「労働時間」の定義

労働時間とは、使用者の指揮命令下で、労働力を提供した時間を指します。

2.法定休日・法定外休日と労働日

a.休日と労働日
労働契約上、労働義務が設定されている日が「所定労働日」で、労働義務が設定されていない日が「所定休日」です。そして、労働日の労働義務が免除された日が「休暇」(年次有給休暇など)や「休業」(育児休業など)です。
労働基準法35条1項は、週1日以上の休日を置き、現実に休ませることを求めています「法定休日」。なお、労働基準法は週1日以上ではなく、4週間で4回以上の休日を与える方法(変形休日制)も認められています(35条2項)。

b.法定外休日
労働契約により、法定休日(35条)より多い日数を休日と定めることは自由です。その場合、法定休日に加えて付与される休日を「法定外休日」と呼んでいます(祝日、土日週休2日制の土曜日など)。これは労働基準法上の休日ではないので35条は適用されませんが、法定外休日に労働した結果、週労働時間が40時間を超えると、法32条が適用され、労働基準法上の時間外労働(法外残業)となります。

c.残業と休日労働
法定時間を超える労働(変形制は除く)や、法定休日における労働が例外として認められるのは、災害などによる臨時の必要がある場合(33条)と36協定が締結され、労基署長に届け出された場合のみです。ただし、労働契約上、残業・休日労働の義務があること(就業規則に具体的事由を限定した義務付け規定があることなど)が前提となります。

★時間外労働(法外残業)
法定労働時間を超える労働を「時間外労働」(法外残業)といいます。変形労働時間制の場合には、所定労働時間を超え、かつ、法定時間超える時間が法外残業です。

★法内残業
所定労働時間(例えば7時間)を超えるが、法定労働時間(8時間)を超えない労働(例えば7時間30分の30分)は法内残業と呼ばれ、労働基準法36条の問題は起きません。ただし、法内残業をさせる場合であっても、労働契約上の義務があることが前提です。

★休日労働と振替休日・代休
・休日労働
法定休日における労働を「休日労働」という。休日労働が8時間を超えても時間外労働とはならない。法定外休日における労働は、労働基準法上の休日労働にはならないが、週の法定労働時間を超過する場合は、超過した時間が時間外労働となります。

・休日振替・代休
休日振替とは、定められた休日と所定労働日を、年間のカレンダー協定などで、事前にチェンジすることをいいます。振替の結果休日となった日を振替休日、元々の休日は労働日となりますから、この日の労働は休日労働とはなりません。なお、休日振替の結果、週労働時間が週法定時間を超えると法外残業となります。
代休とは、事前に休日のチェンジをせず休日労働させた代わりに後日、所定労働日の労働義務を免除して休ませることです。代休をとっても休日労働の割増部分(35%)のみを支払うことが通例です。代休日に休めなかった場合は、当然135%の賃金請求権があります。

d.深夜労働
深夜労働の時間帯は、原則22時~5時です。この時間帯の労働は、所定労働でも残業でも深夜割増賃金請求があり、管理監督職でも請求権があります。残業として深夜労働した場合には、別に残業に対する割増賃金請求権があります。

e.36協定
時間外労働・休日労働に関して、当該事業場の労働者の過半数を組織する労働組合もしくは従業員を代表する者と使用者との間で、書面による協定をし、労基署長への届出がされた場合に、例外的に時間外労働・休日労働が可能となります。この協定を「36協定」といいます。

★協定事項(規則16条)
(ア)時間外または休日労働をさせる必要のある具体的事由(例えば「臨時の受注、納期変更」、「機械、設備などの修繕、据付、掃除」など)、(イ)業務の種類、(ウ)労働者数、(エ)延長時間、(オ)休日労働の回数と終始業時刻、(カ)協定機関。

★延長時間
延長時間は、(ア)1日、(イ)一定期間、(ウ)1年間の3種全てについて定めなければならず、(イ)(ウ)は「基準時間」(平成10年労働大臣告示154号)が定められており、それ以下でなければならない。

【3】労働時間の計算

労働時間は実労働時間で計算します。みなし時間制の場合は、みなし時間が労働時間です。

【4】残業代

残業(法内残業、法外残業)、休日労働、法定外休日労働に対して、その代償としてのプレミアム月の賃金を支払われなければなりません。
法外残業は25%以上、休日労働は35%以上の割増賃金の請求ができます。法定外休日の労働であっても、それにより週法定時間を超えれば25%以上の割増賃金の請求権があります。
法内残業は、割増は付きませんが、時間賃金に残業時間を乗じた賃金請求権があります。

★計算式(月給制の場合)
・時間外・休日労働
「通常の労働時間または労働日の賃金」(所定賃金)÷月間所定労働時間×(1+割増率(0.25または0.35))×時間外(休日)労働時間数
・深夜労働(残業の場合)
所定賃金÷月間所定労働時間×(1+割増率(0.25+0.25))×深夜労働時間数
・割増率
法外残業(時間外労働)25%以上
休日労働35%以上
深夜労働(午後10時~午前5時)25%以上
時間外・休日労働が深夜に及んだ場合は、合計した割増率つまり時間外では50%以上、休日労働では60%以上になります。
労働基準法36条を遵守せずに違法に法外残業または休日労働をさせた場合でも、割増賃金の支払い義務は発生します。
・所定賃金から除外される賃金
割増賃金の算定基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、臨時に支払われた賃金、1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金、住宅手当は算入しません。ただし、住宅に要する費用に関わらず一定額支払われる場合(例えば持ち家居住者1万円、賃貸住宅居住者2万円と定めてある場合)は、参入しなければなりません。

★労働契約上の割増賃金
就業規則または労働協約などで、労働契約上の法内残業や法定外休日の労働の割増賃金を支払うことになっている場合は、それにより算定し支払う義務があります。

★固定残業制度(定額払)
現実の時間外の有無、長短にかかわらず、一定時間分の定額の割増賃金を支給し、その他の時間外労働に対する割増賃金を支払わない「固定残業制度」を導入している企業があるとします。これは、現実の時間外労働により算出される割増賃金が固定残業給の額を超えた場合、差額賃金の請求ができます。

★年俸制と割増賃金
年俸制の場合、割増賃金を請求できないと考えるのは、誤りです。請求権が発生しないケースは、適法みなし時間制がとられていて、みなし時間が8時間以内とされている場合に限られます。これに該当しない制度では、労働基準法の原則通り、実労働時間で算出される割増賃金の請求権があります。
なお、年俸額を12以上(例えば16)で割り、月給と2回の賞与が支払われる年俸制(例えば、月給が年俸額の1/16と、賞与2/16を2回)の場合には、割増賃金の算定基礎額は16分の1ではなく、1/12で除した額でなければなりません。

【5】例外としてのみなし時間制

1.事業場外労働についての「みなし制」(労働基準法38条の2)

労働者が事業場外で業務に従事した場合で、労働時間を算定しにくい場合ときは、所定労働時間労働したとみなします。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働をすることが必要になる場合は、当該業務の遂行に通常必要とされる時間を労働したものとみなします。また、この場合には労働者代表との労使協定によって、通常必要とされる時間を定めることができます。
事業場外労働についてみなし制が採用できるのは、「労働時間を算定し難いとき」に限られます。労働時間を算定できる場合は、この制度を適用することは許されません。

2.裁量労働についての「みなし制」

みなし時間制の対象となる裁量労働制とは、自己の労働時間の配分について、担当業務の性質から、本質的に労働者自らが決定できるものをいいます。ですから、「他者の指示を受けず自らの企画により仕事を行う」のは、みなし時間制の対象となる裁量労働であるとするのは誤りです。

a.専門職裁量みなし制(労働基準法38条の3)
労基則24条2の2および大臣告示で定められた専門業務に現に従事している労働者を対象とし、これを導入するための手続は、過半数代表者との労使協定です。

b.企画職裁量みなし制(労働基準法38条の4)
事業運営上の重要な決定が行われる事業場において、企画業務(企画・立案、調査、分析の一連の業務)に従事している労働者を対象にしたもので、導入手続は労使委員会決議です。適用対象者の同意が必要であり、不同意に対する不利益取扱は禁止されています。

【6】残業代未払い対する対処の仕方

1.証拠確保

経営者によっては、本来労働時間把握義務があるにもかかわらず、実労働時間を正確に記載していない虚偽の管理記録を作って、いわゆるサービス残業をさせる企業が昨今頻発しているようです。残業代の算定の裏づけとなる、労働時間管理記録、業務記録、就業規則などを確保しておく必要があります。

2.関係機関の利用

a.労働基準監督署の利用
残業代未払いは、労働基準法違反であり(24条)、罰則(30万円以下の罰金)をもって禁止されています(120条1号)。 これは最低労働条件に違反して労働させることを犯罪行為とするものであり、極めて強い禁止を意味します。
違反を申告することによって、労基署が使用者に対して調査をし、支払い勧告し、それにより支払われる場合もあります。
36協定を締結していないのに、法外残業(時間外労働)や休日労働をさせることも労働基準法違反になります(32、35条)。労働基準法の罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が適用されます(119条1号)。

b.裁判所の利用

交渉や労基署でも解決しない場合は、裁判所の利用があります。残業に関する明白な証拠があり、小額な場合は、本人訴訟も一つの方法です。原則として第一回期日で結審し判決が言い渡されるケースが多いため、事前に充分な証拠を揃えておくことが肝要です。

c.留意点
サービス残業が広く行われている現状から、労働者個人が実労働時間どおりの請求をすると、昇進できなくなるなど、不利益をこうむることも、違法ではありますが、現実的にはありうることです。労働者個人に企業に立ち向かわせるのではなく、労働組合によって、集団的労使関係を通じて改善させることが、良い方法でしょう。労働組合がない場合は、労働組合結成の契機となることもあるようです。

労働問題Q&A

賃金・労働時間、組合運営など、身近なよくある労働問題についてお答えします。

やさしく解説 用語集

組合用語について、やさしく解説します。