電機連合

文字の大きさ

おたすけマニュアル

おたすけマニュアル

(6)倒産と賃金確保

1.労働債権の裏づけとなる資料の収集をします。使用者に未払債権額の証明書を作成してもらうことが重要です。
2.団体交渉が有効です。
3.会社とその使用者との雇用関係に基づいて生じた債権については、全額一般先取特権があります。
4.未払い賃金の立替払いを利用することも考慮する必要があります。

【1】倒産の場合に請求できる賃金等

1.既に退職している場合、遅延損害金の金利が退職の翌日から年14.6%になります。
2.30日未満の予告期間で解雇された場合は、解雇予告手当(労働基準法20条)が発生します。
3.請求権のある退職金。
4.社内預金など会社に預けた金銭(労働基準法18条5項)。ただし、強制的に預けさせられたか、任意かによって、保護の度合いが違います。

【2】法律上の倒産手続が開始される前の賃金確保の方法

1.交渉と債権譲渡

a.経営者に対して、支払うよう交渉をします。ただし、個々人による交渉ではらちがあかないので、労働組合で使用者と交渉をします。組合がない場合は早急に結成すると良いでしょう。

b.労働者めいめいの労働債権金額の裏づけ資料を、散逸しないよう労働組合が保管します。債権の種類(月例賃金、一時金、退職金など)と金額を証明する文書を使用者に作らせます。文書は代表者の印を押印し、印鑑証明書を添付します。これは、法的手続をとる場合や立替払制度を利用する時に使うためです。

c.隠し財産がないかも調査し、労働者が知らないうちに処分されないよう注意をします。搬出や処分について労働組合の同意を要件とする協定の締結も大事です。

2.法的手続

a.保全処分としての仮差押
未払い賃金等を被保全債権とする仮差押は、裁判所に申し立てて行います。保証金が必要となりますが、労働債権の場合は比較的定額となっており、債権額の5~10%です。ただし、これは強制執行を保全する手段であり、現実に労働債権を回収するためには、改めて債務名義を得て強制執行する手続が必要になります。

【3】法律上の倒産手続が行われた場合

1.破産手続が行われた場合

債務者の総財産(破産財団)を換価処分し、債権者に対して平等公平な配分をする清算型の手続です。債権者または債務者の申し立てにより開始され、債務超過、支払不能などの破産原因があるときには破産宣告がなされます。企業の全ての資産は管財人の管理下に入り、企業に対する債権は原則として破産債権となり、個別的な取立てや執行はできなくなります。
破産宣告前に生じた労働債権は破産債権ですから、裁判所に債権届けをして、配当を受けます。ただし、配当までに時間がかかりますし、銀行など抵当権者が破産手続によらずに抵当権実行により優先的に弁済を受けるため、配当が乏しい場合があります。そのような場合、「未払い賃金立替払制度」を利用することを考えなければなりません。
破産宣告後、労働契約終了までに生じた労働債権は、財団債権ですので、破産管財人に請求し、支払いを受けます。

2.特別清算手続が行われた場合

解散により清算中の株式会社について、清算遂行に支障をきたす事情が生じたり、債務超過の疑いがあるときに行われる、裁判所の監督のもとに行われる清算手続です。裁判所の開始決定が下ると、精算人は特別清算人となり破産管財人と同様の権限を持ちます。
労働債権を含む債権は、特別清算手続に従い、債権額の割合に応じて平等弁済を受けます。協定による場合は、労働債権のうち一般先取特権による優先権のある部分は、協定の条件を定めるについて考慮されます。

3.会社更生手続が行われた場合

株式会社について、破産による事業解体を避けるため、債権者・株主・従業員などの関係者の利害を調整しつつ会社再建を図る裁判上の手続です。会社の経営、資産の管理処分は、管財人に移ります。破産と異なり、担保権者も更生手続によらなければ弁済を受けられず、担保権の実行もできません。
裁判所は更生計画について労働組合等の意見を聞かなければなりません。他の倒産法制に比べて労働債権保護の度合いが高いといえます。

4.民事再生手続が行われた場合

民事再生は、経済的に窮地にある債務者について事業の維持または経済生活の再生を図ることを目的とする、新しい再建型の倒産法制であり、和議法にかわるものとして2000年4月から施行されました。
再生手続の開始決定によっても従来の経営者は退陣せず、再生債務者は業務遂行権および財産の管理・処分権を失いません。従来どおり事業経営を続けながら再生債務者とその代理人が再生計画を作成し、債権者の過半数の同意と裁判所の認可があれば、再生計画に従って事業を継続しつつ、債務を返済していくことになります。 労働債権は一般優先債権として保護され、再生手続によらず随時弁済されます。再生手続開始後の労働債権は共益債権ですが、これも再生手続によらずに一般再生債権に先立ち随時弁済されます。
民事再生法は、労働債権の支払いや解雇・労働条件の変更など労働問題を民事再生手続とは別の問題として処理することを想定しています。労働組合が雇用と労働条件の問題について再生会社に団体交渉を申し込むことができます。会社がこれを拒めば、不当労働行為となります。

5.会社整理手続が行われた場合

裁判所の監督による株式会社の任意整理的な再建手続です。株式会社が支払不能・債務超過の恐れまたは疑いがある場合で、整理見込みがあるときに、裁判所の命令により開始されます。開始命令があると、個別の取立てや執行が禁止されます。個別の担保権の実行は防げませんが、裁判所はその競売手続きを中止することができます。会社は裁判所の命令により、整理計画を立案し実行しますが、整理は全債権者の同意が必要であり、反対者がいると整理できなくなります。
労働債権の確保については、特別の定めはありません。

【4】未払い賃金の立替払制度

1.制度の目的

企業が倒産したために賃金、退職金の支払いが受けられない労働者に対して、その未払い賃金、退職金の一定範囲について労働福祉事業団が事業主に代わって支払う制度です。

2.要件

破産、特別清算開始、会社整理開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始について裁判所の決定または命令があった場合。これについては、裁判所が証明書を作成・交付してくれます。このほか、事実上事業活動を停止し再開の見込みが無く、賃金支払能力がないことを労働基準監督署長の認定があった場合(中小企業に限る)。
未払い賃金が2万円以上残っている人で、裁判所への破産等申し立て日または労働基準監督署長に対する倒産事実認定の申請日の6カ月前の日から2年間の間に、当該企業を退職した人が受給対象者です。
立替払いの対象となる未払い賃金とは、退職日の6カ月前の日から立替払申請の日の前日までの間に到来した賃金および退職金です。
立替払いの金額は、未払い賃金総額の80%です。ただし、退職時期と年齢による上限額(88万~296万円)が決められています。

労働問題Q&A

賃金・労働時間、組合運営など、身近なよくある労働問題についてお答えします。

やさしく解説 用語集

組合用語について、やさしく解説します。