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おたすけマニュアル

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(3)会社分割(事業の分離、事業の統合)→部分的包括承継

1.労働関係を承継しない会社分割は法律上許されません。
2.不採算部門の分割は許されません。
3.労働契約の承継は転籍と異なり、承継される営業に主として従事する労働者の承継は不要とされています。
4.会社分割による労働契約の承継について労働者が異議を言える場合があります。
5.分割前の不当な配転等は許されません。
6.会社分割のみを理由とする解雇は許されません。
7.労働条件は維持されるのが基本原則です。
8.組合員が承継会社に承継されれば労働協約の内容は維持されます。
9.会社分割には労働者の理解と協力および労働者との協議が要求されます。

会社分割とは、1つの会社を2つ以上に分けることをいいます。改正商法の規定する分割の形態は「新設分割」と「吸収分割」です。
新設分割とは、分割する会社(分割会社)A社がその「営業の全部または一部」を分割により設立した会社(設立会社)B社に承継させるという形態です。
吸収分割とは、既に存在する他の会社C社(吸収会社)に承継させるという形態です。
そして、新設分割と吸収分割には、それぞれ「分社型」(物的分割)と「分割型」(人的分割)という形態があります。これは、承継会社が分割に際して発行する株を誰にあてるのかの違いです。分社型とは、分割会社が設立会社等の発行する株式を取得する場合です。分割型は、分割会社自身が株式を取得するのではなく、分割会社の株主が株式を取得する場合です。したがって、会社分割には、基本的には4つの類型があることになります。
会社分割は原則として株主総会での特別決議(3分の2の賛成による決議)が必要ですが、「簡易分割」は、物的分割の場合に限り、承継される財産の価格が分割会社の最終的貸借対照表の財産価格の20分の1を超えないときに認められ、株主総会の特別決議は不要になります。取締役会の決議だけで会社分割することも法律上は可能です。

1.労働者の地位と雇用

会社分割の効力は、権利義務の部分的包括承継と解されています。よって、労働契約も他の権利義務関係と一体となって包括的に設立会社等に承継されます。 分割会社に雇用されている労働者の労働契約の承継について、労働契約承継法3・4・5条は、分割計画書への記載の有無と分割計画作成時点での当該労働者が従事している業務によって、図のように4つの場合に分けています。

【労働者の異議権の有無】

分割計画書の記載の有無承継営業に主として従事する者承継営業に主として従事する者以外の者
(その他の労働者)
記載された労働者甲;当然に労働契約が継承
(本人の同意不要)
丙;本人の異議権有り
(書面による異議を出せば残留)
記載されていない労働者乙;本人に異議権有り
(書面による異議を出せば承継)
丁;規定なし
(当然残留)

国会の労働契約承継法に対する付帯決議は、「企業組織再編のみを理由として労働者を解雇することができないとする(確立した)判例法理を周知徹底させる」としています。したがって、会社分割を理由とする解雇は許されません。つまり、会社分割を人員削減の契機としてはならないということになります。

2.労働条件の維持

会社分割によって承継された労働契約は、分割会社から設立会社等に包括的に承継されますから、労働協約、就業規則または労働契約に規定されている労働条件、および確立された労働慣行は当然維持されます。したがって、労働者との特別の合意がない限り、新設会社等は勝手に労働契約の内容の変更をすることは許されません。

3.労働協約、労使協定の承継

「労働協約の承継」(承継法6条)の規定
組合員である労働者が一人でも承継されるときは、規範的部分も債務的部分も含めて、分割会社との間の労働協約全部と同一内容の労働協約が、承継会社との間で締結されたものとみなされることになります(同条3項)。つまり、協約内容全部が維持されます。分割会社が労働協約のうち承継する部分を分割計画書に記載したり(承継法6条1項)、組合との合意によって債務的部分を承継させることもできます(同条2項)。また、複数の労働組合が締結する異なる内容の労働協約があっても、労働協約は並存することになります。
労基法第24条(賃金の一部控除)、第36条(時間外休日労働)などの労使協定については、会社分割の前後で事業場の同一性が認められる場合には、引き続き有効となります。しかし、事業場の同一性がなくなる場合は効力がなくなりますから、分割後に再度労使協定を締結しなおして届出をする必要があります。

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4.労働者・労働組合の会社分割手続への関与

承継法7条は、分割会社は、会社分割にあたりその雇用する労働者の理解と協力を得るように努めるよう定めています。その方法は労働組合または過半数代表との事前協議です。この事前協議が労働者にとって最も大切な手続です。この規定は努力義務規定ですが、過半数の労働者が分割そのものに反対の意思を表明をしている場合には、分割会社が雇用する労働者の理解を得たことにはならず、会社分割をそのまま進めることは許されないと解する余地もあります。
商法附則5条1項で、会社分割に伴う労働契約の承継に関しては、労働者との協議が義務づけられました。不当な会社分割を許さないために、労働組合はこの「労働者との協議」を大事に活用すべきです。
会社は、設立会社等に承継される営業に主として従事する労働者全員と、それ以外の労働者で分割計画書に労働契約を承継する旨の記載がある労働者に対して、会社分割決議を行う株主総会の2週間前までに通知をしなければなりません。また、会社が通知すべき労働組合は労働協約を締結している労働組合です。ただし、労働協約を締結していない労働組合に対しても通知することが望ましいとされています。

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